風のない十字路
(c) Mitsuko Komuro
 



曲がりくねった道を 切り取る空の色
あの時君が見てた 夕暮れに似てる

風のない十字路で きのうが流れ出す
たくさんの「はじめて」と 交差してた終わり

君が選ばなかった 毎日を今も 過ごしている

風が吹いたら
別なあしたを 歩き始めよう
風が吹いたら
ほんとの自由を 君に返すために

手のひらが覚えてる 薄い肩と背中
今も心をきつく 縛りつけるけど

君が涙見せた 最初で最後の あの日の何故 終わらせたい

Let all the memories go
(記憶たちを見送ろう)
胸にからまる 記憶をほどいて
Let all the yesterdays go
(昨日たちを見送ろう)
時の流れに そっと見送ろう
風が吹いたら
別なあしたを 歩き始めよう
風が吹いたら
ほんとの自由を 君に返すために

風のない十字路で きのうが流れ出す
僕は僕らしいままで 今もここにいる

Let all the memories go
Let all the yesterdays go
Let all the memories go
Let all the yesterdays go
 

作詞 小室みつ子
作曲 木根尚登    


 Tsunemasaさんが歌詞をテキストで送ってくれたのでコピペしました。ありがとう(一応、自分の歌詞は昔のものを除いてファイルにしてとってはあるんですが。わざわざテキストに打ち込んでくださったのを無駄にしたくなかったので)。
 アルバム『Easy Listening」に収録された木根ちゃんのバラードです。TMのコアなファンの方たちは、私の歌詞でもとても丁寧に読んでくれて、いろいろなことを感じ取ってくださいます。たまに私が予想だにしないような深読みまでしてくれるのでびっくりしますが。それはそれで、へえ、そんなふうに受け取ったりするんだあっていう驚きがあるし、深読みがすべて的外れでもなく「おお、するどい!」と思うこともあるので、そういう感想を聞くのは楽しいです。この「風のない十字路」は、久しぶりに深読みされそうな歌詞ではありますね(^^;;;

 この曲をもらって聴いてから、木根ちゃんと電話で話しました。木根ちゃんの要望は具体的な内容ではなく、抽象的なものだったと思います(すでに記憶が鮮明じゃなくなってる(汗) 物忘れが早くてごめんなさい…)。ただ、私の心に一番残った木根ちゃんの言葉は、「(ファンに)期待をさせるようなものにはしたくない」という言葉でした。その言葉の裏にある木根ちゃんのいろいろな気持ち(苦悩もあったと思う)が感じ取れたし、木根ちゃんのその頃の気持ちが私なりに想像できたので、わりとすぐに風景が浮かびました。「明るい歌じゃないほうがいいんだけど、かといって暗くなりすぎて希望がなさ過ぎるのも嫌だなあ」というようなことも言ってました。なので、オトナの別れの歌を書きました。

 タイトルは最後に決める私が珍しく最初にタイトルからできました。別れではあるけれど、前向きな別れ。離れた相手のことをいつまでも想う限り、相手をどこかで引き止めてしまう。本当の意味で互いに自由を与え合うには、それぞれの道を歩もうと歩きださなくちゃというような気持ち。

 何故このタイトルが浮かんだかというと、映画『キャスト・アウェイ』のラストシーンが真っ先に思い浮かんだからです。あの映画は「Wilson」というバレーボールの名演技に泣かされるんですが、最後の最後、つらい結末を迎えた後、主人公が立つのは、アメリカの広大な田舎にある十字路でした。どの方向を向いても、道は果てしなく続いていて地平線が見える。彼は愛する人を過去から解放してあげるために、その十字路に佇んで、さあ、ここからどこに行こうか? というように、すべての方向を見渡してちょっと微笑む。それは決して哀しいのではなく、優しさとわずかな希望がほの見える美しいシーンだと思いました。オトナになると求めるだけが愛じゃないんだな、去っていくことも愛情なんだなあと、しみじみ感じさせてくれた、いい映画です。いろいろな形の風が吹いて心と背中を押してくれる限り、希望はあるし、未来はあるだろうし、いずれにしろ、私たちは歩き続けていくしかないんですよね。

 

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